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スイス編

ハイジがおんじとチーズを作り、アインシュタインが相対性理論を発表し、チャップリンが晩年を過ごし、国連が重要な機関を設置する永世中立国スイス。小さいながら様々な顔をもつ国ですから、「一般的な」とか「典型的な」結婚式を語る事は困難です。とういうことで、私自身が2年間のチューリッヒ生活の中で、実際見た、聞いた、感じた、結婚式事情をご紹介します。


ハイジではなくアインシュタインが歩いた街―チューリッヒ


スイスを知る

スイスはヨーロッパのど真ん中、ドイツ、オーストリア、フランス、イタリアの間に位置し、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語と公用語も4つあります。大雑把にいって、ドイツに近い地域がドイツ語圏、フランスの近くがフランス語圏、イタリアの近くがイタリア語圏と言うわけです。この言語圏によって文化も習慣もおのずと変わってきます。私が現在住んでいるチューリッヒは、世界中の大富豪やゴルゴ13もお金を預けているスイス銀行が軒を連ね、高級時計店がひしめきあうスイス経済の中心地。言語はもちろんドイツ語です。そう、勤勉でしっかりとお金の管理をするのはドイツ系なのです。フランス語圏に行くと芸術の香りがしますし、イタリア語圏の人々は動きが大げさで陽気です。ちなみにロマンシュ語はスイス独特の山の地方の言葉で、それこそハイジとペーターが話していたかもしれない言語ですが、現在はあまり話されていません。


「かみ」に頼る

結婚「式」は絶対にしなければならないものではありません。実際、事務手続きのみで、式は挙げないというカップルもいるでしょう。しかし、式をしないとどうしても完成されない感が残ると言います。それには、花嫁衣裳を着られないからでも、友達におめでとうと言ってもらえないからでもない理由がちゃんとあります。ヨーロッパで力を持つものは、契約書とキリスト教です。ビジネスでもプライベートでも、契約書を作って、つまり紙に書いて署名をすることによって初めて事が有効となります。そんな実務主義的な反面、創造者としての神はもうとにかく絶対的な力を持っています。したがって結婚という人生の大事なイベントにおいても、この2つのかみの力が必要となります。書類に署名し教会で式を挙げる。事務的な手続きと精神的な誓い。この両方をもって、結婚が完結するのです。


国中いたる所にある教会「ひと村ひと教会」だとか


紙に記す

日本の「入籍」にあたる手続きは、州によって多少違いがあるものの、基本的に所属する地域の役所で契約書のようなものに署名をするというものです。まず結婚を決めたふたりは、役所に結婚したい旨を届け出て署名する日取りを決めます。そうするとその役所はそのふたりが結婚すると言う事を公にします。戸籍がない為、重婚を防ぐ意味からこのような方法がとられるのです。つまりその時に誰かが「この人はすでに結婚している」と申し出たなら、結婚できない訳です。誰からの意義申し立てもなく、晴れて取り決めた日を迎える事となったら、立会人を2人伴って役所に出向き、結婚届に署名をします。これによって、紙の上でふたりは正式に夫婦となります。


神に誓う

キリスト教徒にとって、教会での式は大変厳かなものです。「神に誓う」という事の意味は、初詣をし、お釈迦様には手を合わせ、クリスマスを祝う日本人にとってのそれよりも深いものです。新郎と新婦で宗教や宗派が違う場合は、式を挙げる前にふたりで教会に何度か通わなければなりません。そうでなくても、式を執り行う神父なり牧師なりとの面接はかかせません。その中で、誓いの言葉や音楽を含め、式の進行に関する全てを細かく決めていきます。最も伝統的な形式は、新郎が祭壇の前に所在無さげに立ち、参列者がそれぞれの側の席に着いたころ、パイプオルガンや聖歌隊によりクラシックな賛美歌が奏でられます。新婦が父親に伴われて入場し、バージンロードをゆっくりと新郎に向かって歩きます。司祭の前で新婦が新郎の手に委ねられ、ふたりがそろって祭壇を向いたとき、司祭が粛々と式の始まりを宣言します。今日この日にふたりが夫婦となること、参列者はみなその承認となることなどが述べられ、誓いの儀式へと移ります。新郎新婦が司祭に続いて、ひとりひとり誓いの言葉を復唱します。「新郎(新婦)となる私は、新婦(新郎)となるあなたを妻(夫)とし、良いときも悪いときも、富めるときも貧しきときも、病めるときも健やかなるときも、死がふたりを分かつまで、愛し慈しみ貞節を守ることをここに誓います」と、神聖なる場所で、宗教者を前に、近しい人に囲まれて、はっきりと声に出して語るのです。この形式と言葉は、最も古典的なもののひとつで、現在では本人たちの好みによってかなり変わってきますが、「神の前で誓う」これが結婚式であり、これによって、神の前でふたりは正式に夫婦となります。


雲をつかむ

「書類にサイン」→「立会人の2人+お互いの家族で食事」。日を改めて、「結婚式」→「親戚や友達を集めての披露宴」という流れが一般的です。スイスには結婚式を取り仕切ってくれるプロはいません。何から何まで、自分たちで手配をします。まるで雲をつかむようなお話です。署名後のお食事会なら、レストランに予約をとればよいのですからお茶の子さいさいですが、結婚式ならびに披露宴となるとそうはいきません。教会、神父さんまたは牧師さん、音楽を奏でてくれる人、カメラマン、レストラン、料理、全てを個別に探して、依頼して、値段交渉をするのです。ケーキカットどころの騒ぎではない、これぞまさに初めての共同作業となるわけです。例えばまず、招待状を送ろうと思ったとします。その場合、PCの前に座ってそのデザインを考えるところからスタートです。その為「ステキな招待状を作りたかったのだけれど、間に合わなかった!」と言う悲痛なメッセージと共に、」フツーのE-mailで式の日時と場所が送られてきたりする事もあります。自分が動かなければ、何も出来上がらないのです。


ここまでにたくさんの共同作業がありました!


花嫁衣裳を隠す

式の前、新婦が最後の仕上げをしているころ、新郎は教会の前でやってきた人々と挨拶を交わします。この時まだ新郎は新婦の花嫁姿を見ていません。式の当日、教会で、バージンロードを歩いてくるその瞬間まで、新郎は新婦のウェディングドレスを見てはいけないことになっているからです。したがってドレス選びは普通、友人や母親とし、式当日まで新郎の目に触れないよう隠しておきます。貸衣装は存在しないので購入することになり、かなり値がはります。その為、最近ではごく普通のワンピースに自分で花をあしらったり、豪華なアクセサリーや洒落た小物を添えたりして、花嫁衣裳とする人も多いようです。お色直しは基本的にしません。ひとつの衣装を大切に、その日一日着続けます。


音楽を選ぶ

式を彩る音楽ももちろん自分達で手配します。バンド、四重奏音楽隊、ピアノ奏者、バイオリン奏者、ゴスペル歌手等々。自分たちの好みに会う音楽家を自分で探し、いつからいつまでどんな音楽をと依頼します。式のあとのパーティーまで同じ楽隊だったり、全く毛色の違うものだったりします。ちなみに、最近結婚式を挙げた友人に「教会で使った曲は?」と聞いてみました。これを読む方の曲選びの参考になれば、と思って。返ってきたのは「新郎の妹さんが自作の曲を歌ってくれた」という、参考にはならないかもしれないけれど、心温まるエピソードでした。


指輪と出逢う

結婚指輪。日本だとブランドが問題になるのでしょうか?こちらでは個性的なものが好まれるようで、地元の宝飾店で作ってもらったり、若手のデザイナーに依頼したりしているようです。私が個人的に気に入っているのは、結婚を決めた日にチューリヒの旧市街で、それぞれが気に入ったものをお互いに買いあったという、ブラジル人とスイス人の夫婦の指輪です。小さなバラが連なって輪になった彼女のものと、同じ色合いのシルバーで太くてあっさりとした彼のもの。まったくのおそろいではないし、おそらくそれほど高価な品ではないのでしょうが、その時そのふたりが見つけなかったなら、ペアになることはなかったであろうそのばらばらな指輪たちに、出逢いの物語を感じるのです。


小物を添えれば素敵な花嫁衣裳

街のショーウィンドウ

披露宴をつくる

すべての披露宴に共通していると思われるのは、集まる場所と飲み物と食べ物がある。と言う事でしょうか。それ以外は、なんでもありです。時間割なんてありませんし、お祝いしたい人がわいわいやって来て「おめでとう」と言う機会があればいいというコンセプトです。立食でワインと軽いおつまみが廻ってくる形式だったり、立食だけれどワゴンに軽食程度の料理が並んでいて各自取りに行く形式だったり、着席での食事だったり、スピーチがあったり、最初から最後まで誰も一言も話さなかったり、新郎新婦の挨拶があったり、花嫁の父が突然ハーモニカを吹いたり、花婿の両親が踊りだしたり。音楽があったりなかったり。ケーキがあったりなかったり。ゲームをしてみたりしなかったり。明るいうちにお開きになったり終電の時間まで続いたり。2次会のようなものがあったりなかったり。それこそ「誰と誰」が結婚するかによって、その形式は変わってきます。きっちりしたいドイツ語圏の彼とお祭り騒ぎ好きのイタリア語圏の彼女だった場合、着席でのフルコースの食事の後2次会風のダンスパーティーをするかもしれませんし、どちらかが外国人の場合、その国の民族衣装にお色直ししたりするかもしれません。なんでもいいのです。その代わり、全部自分達で計画し実行しなければなりません。ヨーロッパ的ですね。場所も、レストランだったり、日本で言うところの公民館のような場所だったり、します。公民館の場合、飾りつけも自分達でします。布を買ってきて壁を覆ったり、リボンをつけたり、椅子や机に布をかけたり。そこに料理を運んでくるケータリングサービスと、サービスする人の手配も新郎新婦の仕事です。探して交渉するのです。レストランの場合は飾りつけこそしませんが、料理は自分たちの希望を伝えて値段交渉をする必要があります。何を大切にしてどんな式にするか、全く当事者の自由なのです。


ふたりでがんばった飾りつけ完成!


ナニをもらう?

ご祝儀を持っていく習慣は基本的にありません。したがって(?)引き出物もありません。招待客はあくまでも招待されたのであって、披露宴の費用は全て新郎新婦持ちです。それでも招待されたら、何かしらプレゼントを持って行きます。立食式のカジュアルなパーティなら、お花やワインなどいくらもらっても困らないものを手土産に。着席でコース料理の出るパーティなら、それなりのものを。しかしこの「それなりのもの」がかなりの難題です。伝統的には新郎新婦が作成した「ほしいものリスト」にそって贈り物を持っていく習慣があります。リストを受け取ったゲストは、自分が贈ることにしたプレゼントに斜線を引いて、次の人の渡すのです。「これをくれ!」と言っているようで、奥ゆかしい日本人には抵抗がありますが、これなら無駄なものを贈る心配も贈られる心配もないわけです。もっとも最近では、素敵なカードを書いてお金を同封したり、風船の中にお花と一緒にお札を入れたり、工夫をして現金を渡すようにしているようです。色々と物入りな時期ですから、実のところそれが一番ありがたいのです。素敵な日本のご祝儀袋を輸出してみたら売れるかもしれませんね。


この風船の中にお札が!

こ洒落たお祝い

旅に出る

フリッターヴォッヘン(独)=ハネムーン(英)。「はにーむーん」に比べて、語感的にあまりロマンチックでも楽しそうでもありませんが、意味は「恥じらいつつ囁きあい触れあう週」。意味も「蜜月」に比べてまるで標語のようです。まあ、とにかくそんな「週」にするために選ばれる目的地は、青い海、白い砂浜のあるリゾート地が主です。NYへ行ってミュージカル&買い物三昧をしようとか、中国の4千年の歴史を見学してみようとか、そういう旅はこの際あまり好まれません。教会からそのまま馬車で・・・というのが伝統的な新婚旅行への旅立ち方ですが、現代っ子たちは、お財布の具合やお互いの休暇を考慮して、一番都合がいいときに旅に出ます。毎年最低4週間は休暇が取れるスイスでは、この機会になんとしても一世一代の旅行をしなければならないと言う事はないので、のんびりと折をみて出かけるようです。


風船も結婚式を彩るアイテム

馬車で新婚旅行へ出発?!

ふたりで過ごす

結婚式を終えて晴れて夫婦となったふたり。これからはいつも一緒です。ヨーロッパでは、何でも夫婦単位。ふたりはセットとしてあつかわれます。結婚式を含め招待を受ける時は、たとえどちらか一方だけが知り合いであっても、必ずふたりで呼ばれます。友達と遊びに行く時もごく普通にパートナーを連れて行きます。そうすることによって、共通の友達が多くなりふたりを中心に輪が広がり一緒の時間が更に増えて行く、という良い循環が生まれます。ヨーロッパの夫婦は日本の夫婦に比べて、一緒に過ごす時間が圧倒的に長いのです。ガイジンの夫婦がいくつになっても手をつないで歩くのは、ながい間ふたりの時間を大切にし続けた結果なのかなと思います。末永く仲良し夫婦でいる為に、この際お友達の旦那様奥様、彼彼女を一緒に結婚式に招待してみてはいかがでしょうか?


いつまでも仲良く